このテキストは、初級レベルの学習を終えて中級レベルに入った人が、中級レベルの読解の学習をする際に必要な、今持っている読む力より少しやさしいレベルの文章を速く、正確に、たくさん読む力をつけるための速読用教材として作成されました。 自分の国の言葉で書かれた文章を読むときのことを考えてみてください。日常生活の中で目にする文章を読むときは、知らない言葉や表現があっても、「この言葉、何だろう?」と思いながら、まずはそこを読み飛ばして先に進むでしょう。そして、その言葉や表現がわからないと文章の意味がわからないと思ったら、辞書で調べたり、他の人に聞いてみたりするでしょう。一方、勉強や仕事などで、ふだんあまり使わない言葉があったり、よく知らない内容が書かれていたりする文章を読むときはどうでしょうか。ゆっくり時間をかけて内容を確認しながら、読んでいくでしょう。 読む力を伸ばすには、2つのトレーニングが必要だと考えています。1つ目は、少し難しい文章の読解に取り組むトレーニング、2つ目は、今の力で十分読める文章を速く正確にたくさん読むトレーニングです。このテキストは、2つ目のトレーニングのために作成しました。一日1題、目標の時間を設定して速く読む練習をしてください。 読解の授業では、先生の問いかけに答えながら正しい答えを見つけたり、先生が正解は何かを説明したりするという活動がよく見られます。先生の説明のおかげで自分一人では読めなかったものが読めて正しい答えがわかるので、「勉強できた!」と思うかもしれません。でも、ちょっと考えてみてください。このような読み方だと、実際に生活したり仕事したりする場面で文章を読むときにも「先生」が必要になります。「先生」がいないと読めないのでは困ります。 では、どうしたらいいでしょうか。まず一人で読んで質問の答えを考えてください。その後で、自分が考えた答えについて他の人と話し合ってください。意見を交換したり、質問し合ったり、説明し合ったりするなかで、自分の読み取ったことを確かめたり、考え直したりするという読み方をしてみましょう。考えたことを言葉にして表すことで、自分の考えがはっきりしますし、自分の読みの不十分なところにも気付くことができます。他の人と話し合ったら、一緒に別冊の『解答例と解説』を読んで、話し合ってください。他の人と話し合う活動を通して、自分の読みを見直したり深めたりすることで、読む力を伸ばすことができるでしょう。 また、一人で学習する人は、読んで質問の答えを考えた後、別冊の『解答例と解説』を読んで、もう一度考えてみてください。先生から正解を教えてもらうのではなく、自分の力で読み進めることで、読む力をつけることができるでしょう。 読解の授業の目的は、問題の答えを知ることではありません。どんな読み方をすればいいかを見つけること、そして自分で読む力をつけること、それが読解の授業の目的です。このテキストはそのような「読む力」をつけるための教材として使っていただきたいと思っています。 ■ 本書の特徴 1.初級を終了して中級に入った学習者(中級前期から中級中期までのレベルの学習者)を対象にしています。全体を大きく2段階に分けました。ステップ1は、中級前期の学習者を対象に、ステップ2は、中級中期の学習者を対象にしています。 2.十分練習ができるように、100題用意しました。ステップ1には、初級後期レベルから中級前期レベルの文章が50題、ステップ2には、中級前期から中級中期レベルの文章が50題あります。 3.問題はやさしいものから難しいものへ進むように並んでいます。 4.各問題には、速く読む練習をするために、読んで質問の答えを出すのにかかる目標の時間が示されています。時間を意識して速く読む練習をすることが課題です。また、繰り返し読むことで、読むスピードが速くなるだけではなく、前は気付かなかったことに気付いたり、前とは違う考えになったりして、内容の読み取りが広く深くなることが期待されます。ぜひ、1回読んで終わりにするのではなく、少し期間をおいて、繰り返し読んでみてください。そして、読むのにかかった時間を毎回記録してください。 5.質問の種類には、必要な情報を読み取るもの、文章の内容理解するもの、筆者の主張を理解するものがあります。 6.読む量を増やすために、短い文章から始めて、徐々に長い文章を読むことができるように問題文が並んでいます。文字数の目安は、以下の通りです。 ・ステップ1 短文: 100~300字程度 中文: 300~600字程度 長文: 600字以上 ・ステップ2 短文: 200~350字程度 中文: 350~600字程度 長文: 600字以上 7.日常生活で扱われている文章が楽に読めるようになることを目的に、お知らせやパンフレット、雑誌の記事、メールなど実用的な文章を取り入れました。 8.文章のタイプとしては、意見文、説明文、エッセイ、図や表を使った文章などを扱いました。 9.問題文の内容に合わせて、「です・ます」体と「だ・である」体を使い分けています。 10.文章のトピックは、日常生活のことから始めて、一般的なこと、社会的なことへ、さらに、専門的なこと、アカデミックなこと、抽象的なことへと進みます。 11.漢字のルビは、ステップ1には各文章に初めて出てくる漢字全部に付いていますが、ステップ2は初級で学習するとされている日本語能力試験N4レベル以下の漢字には付いていません。 12.別冊の『解答例と解説』には、各問題の読解ポイントと解答例、そして問題文や質問を正確に読み取るために必要な言葉を取り上げました。 13.質問の答えは、読んだ人の考え方によって異なることから、「解答例」としています。まず2人で話し合った後、別冊の『解答例と解説』を読んで、解答例や解説をもとに再度話し合ってください。 ■ 別冊『解答例と解説』について ・読解ポイント:問題文の中の大切な部分を取り上げて、そこからわかることを示しました。 ・解答例:解答は必ずしも1つではないと考えています。ここでは、解答例とその理由を示しました。解答の異なる人と話し合ときの参考にしてください。 ・ことば:正確な読み取りに必要な言葉を示しました。 ============ この本の使い方 1.目標時間を設定し、一人で読んで、質問に答える。かかった時間を記録する。 各問題に目標時間が設定してあります。目標時間内に読み終わらなかった場合は、時間内にどこまで読めたかを確認してください。その後、続けて読んでから質問に答えてください。 2.読み終えたら、他の人と「どうしてその答えを選んだか」を話し合う。 できれば2人の組で話し合います。話し合いの組の作り方はいろいろあり、期待される効果が異なります。 クラスなどで、早く読み終わった順に組にすると読む力のレベルが近い人同士で話し合うことができます。 また、レベルの異なる人の組は、たくさん読み取った人とそうではない人が互いに質問したり、説明したりすることで、双方の読みが深まるという効果が期待できます。 3.話し合った後、一緒に解説冊子(別冊『解答例と解説』)を読んで、さらに話し合う。 解答例や解説を読んで、読解ポイントを確認し合ったり、話し合ったりしましょう。 一人で学習する人は、1.の後『解答例と解説』を読んで、自分の答えや考えを、解答例や解説と比較してください。 4.自分答えとその理由をもう一度考えて、確認する。 他グループの人と確認し合ったり、クラス全体で確認し合ったりしてください。一人で学習する人も、自分で確認てください。
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الأقسام: تعليم اللغة اليابانية, كتب
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